現代社会では、仕事中、通勤中、あるいは自宅でくつろいでいる間など、多くの時間を座って過ごす人が増えています。しかし、研究によれば、この座りがちなライフスタイルには深刻な健康リスクが伴います。長時間の座位は、心血管疾患、糖尿病などの代謝障害、さらには全死亡率の増加と関連しています。

長時間座ることのリスク
長時間座っていると、体の自然な血流が減少し、筋肉への栄養素やホルモンの供給が妨げられます。これにより、インスリン抵抗性と呼ばれる状態が引き起こされることがあります。インスリン抵抗性とは、細胞がインスリンにうまく反応しなくなり、食事で摂取した糖が細胞に入りにくくなる状態です。これが進行すると、2型糖尿病や心血管疾患のリスクが高まります。

運動による効果
幸いなことに、これらのリスクを軽減するための簡単な解決策があります。それは、定期的な運動休憩を取り入れることです。最近の研究では、長時間の座位中に30分ごとに短いレジスタンス運動の休憩を取り入れることで、血流と糖代謝が大幅に改善されることが示されています。これらの運動は特別な器具を必要とせず、デスクや作業スペースで簡単に行うことができます。

具体的な運動の提案
以下は、日常に取り入れられる簡単な運動です:
– 自重スクワット:椅子から立ち上がり、しゃがんでから再び立ち上がる動作を3分間繰り返します。
– グルート収縮を伴うハイニー:立ち上がってその場で足踏みをし、膝を高く上げ、各ステップでお尻の筋肉を収縮させます。
– カーフレイズ:立ち上がり、かかとを地面から持ち上げ、1秒間保持してから元に戻します。

これらの運動は血流を増加させ、インスリンに対する体の反応を改善し、長時間座ることに関連するリスクを減少させるのに役立ちます。

結論
仕事で長時間座りっぱなしになることを変えるのは難しいかもしれませんが、仕事の合間に短い運動休憩を取り入れることで、座りっぱなしの悪影響を抑制することが可能です。次回、長時間座り続けていることに気づいたら、立ち上がって少し動いてみて下さい。

参考文献:Rogers E.M. et al. Exp Physiol. 2023

(文責:立命館大学スポーツ科学部 藤田聡)